09月30日(水)

 寒くなってきたので、コンビニへ行って肉まんを買った。温かい肉まんをかじりながら、ミワは家路を歩く。
 ちょっぴり日暮れが早くなり、長い影を踏んで、誰もいない通学路を歩いて行く。涼しい風がそよそよと吹く。こんな寂しい帰り道は、ランドセルが重たく感じた。
「おいしいなあ……」
 ミワは肉まんを食べる手を止め、ぼんやりと夕暮れを見ながら呟く。
「誰かと一緒なら、もっとおいしいのかなあ……」
 その時だった。細い道の真ん中に大きなトラックがパッと現れた。猛スピードでタイヤが地を這う音が聴こえる。
 ミワは突然のことに体を硬らせ、一直線へ向かってくるトラックを避けることが出来なかった。
 ミワの体は空中へ投げ出された。ミワには一瞬の出来事がゆっくりとスローモーションに見えていた。投げ出された身体が地面に叩きつけられる瞬間、死を覚悟し、ギュッと目を瞑った。
 次に目を開けたとき、目に飛び込んできたのは一面に彼岸花の咲く花畑だった。遠くに大きな河がうねっている。
「ここは……あの世?」
 ミワは辺りを見渡す。どうも、死んでしまったようだ。
「やや、ミワさま、ミワさま。探しましたぞ。我らの世界へようこそおいでくださいました」
 どこからか渋い声がした。