09月22日(火)

「先程入ったばかりの臨時ニュースです」
 テレビ越しにアナウンサーが切迫した表情で語りかけてくる。のんびりとテレビを流し見しながら、羽を伸ばしていた休日。母と妹は買い物、父は友人と喫茶店へ出掛けて行った。家には俺と犬のバロンしかいない。ポテトチップスを口に放り込んだ。
「日本上空から謎の未確認生命物体が降り注ぎ、全国各地で怪我人が相次いでいます。政府は自衛隊を緊急配備し、事態の収拾に向かっています。皆さん、外出は控えてください。落ち着いて、室内で待機してください」
 俺はポテトチップスをぽろりと落とした。そっと窓の外を覗きに行く。バスケットボールほどの大きさの、黒い球体が、雨のように空から降り注いでいた。地面に落ちたソレは、跳ね返って、通行人に飛びかかる。逃げ惑う通行人。でも、そんなに痛くは無いようだ。本当にボールのように、そこら中ではね回っている。
 俺の携帯が震えた。父からだ。
「純一、無事か? 父さんは無事だが、喫茶店から出られないんだ」
「うん、無事だよ。母さんと華は?」
「2人と連絡が取れなくてな、純一なら取っているかと思ったが……そうか」
「黒いボールか跳ねているだけでしょ? 俺、行ってくるよ。そんなに遠くないし」
「おい! アイツらは危険だぞ! 無理に動こうとすると——」
 俺は電話を切った。正直、こんな状況にワクワクしない方が無理だ。厚手のジャケットを羽織り、手には軍手。申し訳程度の防御装備を整える。
「バロン、散歩に行くぞ」
 さんぽ、という言葉に喜ぶバロンと共に外へ出た。