09月21日(月)

 昨日の夢では、僕は首を吊っていた。たまたま、不自然にそこに張っていたロープに足が引っかかり、転んで、たまたまその先に首が吊れるようなかたちに結ばれたロープがあって、その中にたまたま首がはまり、僕は首を吊って死んだ。一瞬で意識が落ちたので、不思議と苦しくはなかった。
 僕は、毎晩毎晩、なんらかの方法で死ぬ夢を見る。僕は、毎回毎回、死ぬことを受け入れて、死んでいく。だから、きっと今日も死ぬんだ。
 いつもと全く同じ朝。機械的なめざまし音に起こされて、起きる時刻は6時半。着替えて、リビングへ向かうと、母が既に朝食の準備を終えている。目玉焼きと、ウインナーと、ほうれん草のソテーが少し。パンとコーンスープが添えられている。
「おはよう、しのぶくん。ごめんね、目玉焼きの黄身、焼いてる途中で割っちゃった。でも、味は美味しいから」
 母はおっちょこちょいなので、いつもうまく卵を割れずに黄身を割ってしまうのだ。
「おはよう。いいよ、大丈夫」
 僕はいつもと変わらない返事をする。
「いただきます」
 手を合わせてから朝食を取りはじめる。まずはスープから。その次はほうれん草のソテー。何となく、毎日同じ順番で食べている。いつもと変わらない味がする。
 朝食を、食べ終わる頃、妹の紫乃が起きてくる。寝起きでぼさぼさの長い髪を梳かしながら、僕と母へ挨拶する。
「お兄ちゃん、おはよぉ……。今日は元気? 体調悪くない? ママもおはよぉ」
 なぜかいつも、僕の体調を気遣ってくる。昨日の僕は風邪でも引いていたのだろうか? いつも通りの返事を返す。
「おはよう、紫乃。今日も元気だよ」
「おはよう、紫乃、早く食べちゃいなさい。遅刻しちゃうわよ」
「わ、そんな時間か! 今日は日直で早く行かないといけないんだった!」
 紫乃は朝食をかき込む。いつも通りのやりとりの中に、僕は一つ違いを見つけた。いつもの紫乃は、今日はテストと言って慌てるはずだ。こうした、些細な違いを見つけるのが僕のささやかな楽しみだ。
 さて、今日は、どんな日になるだろう。僕は、毎日今日という日を繰り返している。いつ、今日が終わるのだろう。今日も、僕は死ぬのだろうか。
 そんなことを考えながら、僕は学校へ向かう。
「紫乃、先に行くね。母さん、いってきます」