09月11日(金)

キキ——ドゴォン——。

大きなブレーキ音と共に俺の視界は真っ暗になった。
とにかく何も見えない。

「何が起こったんだ……?」
 
確か、さっきまで会社へ向かっていたはず。
そうだ、今日は寝坊したんだっけ。それで走って横断歩道を渡っていたら、トラックが突っ込んできて——。

「トラックにぶつかったはずだが、どこも痛くないな」
 
暗闇の中、自分の体をまさぐり、異常がないか確認する。不思議なことにどこにも怪我はないようだ。
 
急に辺りが真っ白に塗りつぶされる。
俺は眩しさのあまり目を閉じた。
次に目を開けた時には、目の前に海が広がっていた。

というより、大海原の真ん中だ。
俺はさっきぶつかったトラックの上に立っていた。今にも沈みそうな。

「だ、誰か! 助けて!」

トラックの運転席から声がする。女の声だ。
俺は急いで運転席を覗き込み手を差し出した。

「早く! 捕まれ!」

助手席に座った、泣きそうな顔をした黒髪ポニーテールの少女が必死にしがみついてきた。
俺は力いっぱい引っ張りあげる。

「た、助かりました……。でもここどこでしょう……」
「海の真ん中だな」
「そうですけど……。私、東京にいたはずなんです」
「俺もそのはずだったんだがな」

2人で途方に暮れていると、遠くに島が見えた。

「あっ! あそこに島があります!」
「いや、なにかおかしい……島が、こっちに向かってるッ!?」

ものすごいスピードで、島がこっちへ向かってきているのだ。