やあ、諸君。今年も夏が来た。
夏といえば海、海といえば水着、水着といえば美女とランデヴー。
ということで、俺は、海の家でアルバイト。美女がこちらを振り向く、その瞬間を待つこととした。
ひたすらに焼きそばを焼く。ろくに冷房も効かないキッチンで、ひたすらに焼きそばを焼いていた。ソースのこげる香ばしい香り。食欲をそそるその匂いも、一日中鼻腔を満たしていれば、げんなりする臭いへと変わってくる。
店長がキッチンに向かって言葉を投げてくる。
「焼きそば一丁! かき氷二丁! 焼きとうもろこし二つ!」
「ハァイ! よろこんで!」
俺もずいぶん使い込んだ言葉を投げ返した。焼きそばをパックに詰め、焼きとうもろこしを金網の上で温め直す。その間に、かき氷機で氷を擦り下ろす。
なんでこんなことになったんだ。俺は忙しなく動きながら考える。美女はどこへ。俺の夏休みは。なぜかキッチン担当になってしまったのが、よくなかったのかもしれない。一人暮らしで料理スキルを磨き上げてしまったことを今更ながらに悔いた。
「お待たせしました! おねがいしやす!」
カウンターに料理を置いたら、店長に向かって言葉をぶん投げる。
「ありがとよ!」
間髪入れず、店長が料理をかっさらう。
美女は、どこだ。もうすぐ、日が暮れる。