「いやあ、久しぶりだなあ」
そういってビールを俺に掲げてくるのは青木。いつもニコニコしている好青年だ。
「本当に久しぶりだなあ、3年ぶりくらいか?」
俺の持っているビールをカツンと当てる。
「赤阪、全然同窓会に出ないもんな。今日は来てくれて嬉しいよ。……あっ、河野も出てるぞ」
青木がこっそり教えてくれたその子は、俺の初恋の子だった。少し影のある感じであったが、顔立ちは整っていて、授業中、いつまでも見ていられた。
「おぉ、河野か。懐かしいな。可愛くなったか?」
「もちろん。相当美人に成長してたぞ。俺のことはいいから行ってこいよ」
青木は同窓会会場の奥の方を指差す。
「ありがてえ、ちょっと行ってくるわ」
俺は青木に手を合わせ、河野の元へ向かった。
河野は、一番端の席に一人で座っていた。スマホの画面をずっと見ており、近づくな、という強いメッセージを感じた。長くまっすぐな黒髪で顔を隠していたが、間違いない、これは相当な美人だ。それに気付いた瞬間、俺の心は決まった。話しかけよう。
「久しぶり、河野。卒業式依頼だな」
俺は話しかけるなオーラに耐えながら隣の席へ座る。酔いなのか、緊張なのか、ビールを持つ手が震えた。
「……赤阪くん」
「おっ、俺のこと分かる? 嬉しいな。同じクラスだった赤阪雄平だよ」
「うん、覚えてるよ……」
本当に美人だった。肌は陶器のように滑らかで白く透き通っていた。真っ黒な瞳は大きく澄んでいて、見つめていると吸い込まれそうだった。そんな彼女が、俺のことを覚えていてくれたのだ。俺は内心舞い上がった。
「いつもいっぱい連れてる、赤阪くん、でしょ……今日は一段と、凄い霊連れてるね」
「えっ?」
霊を連れている? 河野ってこんな不思議ちゃんだったか? 俺は動揺した。