「これから、能力テストを行います」
朝礼で、先生は言った。
何の予告もなしだった。教室内はざわつく。
「先生! 今日は授業なしですか!」
「聞いてないよー。やだー」
「能力テストって何するの?」
生徒達は口々に先生に喋りかける。しかし、先生は硬い表情を崩さず繰り返す。
「これから、能力テストを行います」
「せんせー聞いてる?」
「これから何するんですか」
しかし、先生は同じ言葉を繰り返した。
「これから、能力テストを行います」
異常性に気づいた生徒たちは、徐々に静まり返っていく。
「これから、能力テストを行います」
何度目かのそのセリフのあと、先生は静かに倒れた。女子生徒たちが、たまらず叫び声を上げる。逃げ出そうと席を立つ生徒もいた。しかし、教室の窓ガラス全てが突然割れはじめる。反射的に机の下へ潜れなかった窓際の席の生徒の体に容赦なくガラス片がささる。
「逃げよう」
誰かが言った。無言で生徒たちは席を立ち、勢いよく引き戸へ走っていく。
引き戸を開けた先には、鉄バットを握りしめた体育の先生がいた。
「これから、能力テストを行います」
そういって、バットを生徒に振り下ろす。鈍い音がした。
もう、教室に残った者たちは身を寄せ合って辺りを見渡すことしかできなかった。すすり泣く声も聞こえた。